ヒアリング
不動産の賃貸営業の中でも1番はじめの業務
「ヒアリング」の実務について細かく解説をしていきます。
240万円
これは5万円の家賃で4年間住んだ場合の合計金額です。
人が生活する上でなくてはならない「不動産」
引っ越しは、人生の中でも一大イベントと言っても過言ではありません。
そのような機会に携わることができるのが賃貸営業の魅力ですが
大きな金額を扱う仕事だということを理解する必要があります。
また、引っ越しに慣れているお客様というのはごく少数です。
そういったお客様に対して、要望を聞き取りつつ、ご入居までサポートできるように
知識と経験を積むことが必要不可欠だと考えます。
今回は賃貸仲介の入り口の「ヒアリング」の部分をまとめました。
◆初めに
賃貸営業として聞き取りをしていくにあたり
前提として知っておく必要がある事項をいくつか紹介します。
この前提条件を把握した上で実際の聞き取りに臨んでいただければと思います。
▼前提1:100点満点の物件はない
お客様の希望の条件が全て一致する物件存在しません。
聞き取りの段階でお客様の優先順位を把握し、できるだけ条件が一致する物件を提案できるようにしましょう。
▼前提2:お客様と信頼関係を築く
お客様と信頼関係を築くことはお申込を取るための成功の鍵です。
ポイントは「清潔感」「お客様に寄り添う」「丁寧な仕事」3つです。
見た目の清潔感は社会人としての基本ですので身だしなみには気を使いましょう。
お客様の声に真摯に耳を傾け、丁寧な対応を心がけましょう。
普通、不動産会社にはヒアリングシートというものを作成し聞き取りをしますが
淡々とその内容を聞くだけでは尋問のようになってしまい信頼関係は築けません。
約束を忘れたり連絡が遅いとお客様は不安になってしまいます。
そうならないためにも、一つ一つの仕事を丁寧に行いましょう。


▼前提3:接客時間は3時間が目安
長すぎると物足りなさを感じ、長すぎると飽きてしまいます
最初の来店から退店までを3時間程度になるよう意識しましょう

◆ヒアリングの重要性
ヒアリンは聞き取りを通じて、お客様とのミスマッチ、理解不足をなくすためにも重要です。
お客様のニーズをきちんと理解できれば、希望に沿った物件提案ができ、ミスマッチが防ぐことができます。
お客様が求める理想の物件を見つけるためにもヒアリングで表面的な情報だけでなく深層のニーズを把握することが重要です。
また、不動産業界で働いている人であれば当たり前と思っている知識もお客様にとっては全く知らないというケースもあります。
知識不足によって物件選びで失敗しないように営業マンとしてフォローする必要があります。
どんな部分が分かっていないかをヒアリングで把握した上でクリアな気持ちでお客様が引っ越しできるようにしましょう。
◆聞き取りのポイント
最低限聞き取る事リスト
名前
検討中の物件
現在のお住まいの情報
引っ越し時期
入居人数
引っ越し理由
間取り
通勤、通学のエリア
駐車場の有無
希望エリア
駅からの距離
賃料
契約形態
希望の条件
これらがヒアリングすべき事項になります。
それでは詳しく説明していきます
・引っ越しの理由
引っ越しの理由は初めにさらっと聞きましょう。
通勤時間を短くしたい、部屋が狭い、家賃が高い etc
引っ越し理由は人それぞれですが、ポジティブな引っ越し理由ではないこともあります。
ニュアンスの違い程度しかないですが、さらっと聞いてしまいましょう。
引っ越しの条件の軸になる部分が隠れているので理由が分かればお客様がまだ気づいていないニーズを掘り起こせるようになります。
・引っ越し時期
引っ越しの理由を聞いた後に希望の時期もあわせてヒアリングしましょう。
引っ越しを急いでいるのか、それともゆっくり探されているのかによって提案できる物件も変わります。
どこの不動産会社も契約や契約開始日は申込からおおよそ2週間後が目安です。
一方、賃貸物件の解約予告は1ヶ月が一般的です。
この辺りのスケジュール感覚はお客様は知らないことが多いです。
きちんと説明してお客様に理解してもらいましょう。
(質問例)
差し支えなければ、引っ越しの理由をお聞かせ願えますか
今回なぜ引っ越しされるんですか
お引っ越しの時期はいつ頃をお考えですか

余談にはなりますが、入居日についてお伝えする際には注意をしてください。
未退去・未リフォーム・新築なども先行で申込ができる場合があります。このような物件を紹介し申込となった場合以下のようなリスクがあります。
・新築物件の竣工日が遅れる
・未退去、未リフォーム物件の室内がボロボロでリフォームが予定より時間がかかる
そのため「⚪︎日で入居できます」と確定していない段階で言い切ってしまうのは危険です。
お客様はその日程で解約届を出したり、引っ越し業者を手配したりします。

・エリア
そのエリアを選んだ理由を必ず聞きましょう。
(希望条件が駅徒歩10分以内の場合)
お客様のニーズは「駅徒歩10分の場所に住みたい」のではなく、「通勤の際に駅までの移動時間を短縮したい」のかもしれません。
もしそうであれば駐輪場がある物件で駅徒歩15分の物件の方がお客様には気に入っていただけるかもしれません。
・賃料
いくらまでなら払えるかを確認しましょう
また、収入、希望の初期費用も聞きましょう。
賃料の目安は月収の3分の1程度になります。
初期費用については高くても賃料の4〜6倍とイメージしておくと良いでしょう。

(質問例)
毎月の賃料の上限はいくらぐらいでお考えでしょうか?
賃料以外が全てご希望通りの場合いくらまでなら出せますか?
審査の際に収入も見られるのですが差し支えなければ収入はおおよそいくらぐらいでしょうか?
就職・転職の場合、審査時に採用証明書が必要になる場合もありますがご準備は可能でしょうか?
初期費用はおいくらぐらいをお考えですか?
・希望の間取りと入居人数
入居人数、現在の住んでいる間取りも合わせて聞き取ります。
最近はカップル・ファミリーにはLDKタイプのお部屋を好まれる方が多くなっています。
この時に、今住んでいる物件の情報や探している時に気になった物件があった物件があったかも聞いてみましょう。
検索条件、物件の情報があると、聞き取り時のお客様との認識のずれをなくし、適切な提案に繋げることができます

・希望の条件

上記のように条件はたくさんありますが聞きすぎてしまうと提案できる条件を狭めてしまいます
もしお客様の条件が多かった場合、絶対に外せない条件を絞ってもらいましょう
※聞きすぎないor優先順位をつけてもらう
聞き取りの際にこの二つを意識してみましょう。
また、質問の際にオープンクエスチョン、クローズドクエスチョンを使い分けましょう


・契約形態
契約の形態は個人で借りられる場合が多いですが、法人での契約もあります。
その場合の流れについては個人の方と変わってきますが詳しい内容は別講義で作成します。
◆聞き取りのアプローチについて
聞き取りにおいてお客様への配慮を忘れないようにしましょう
▼最低限必要な事項を一度で聞き取る
一度で全て聞き取った上で深堀までできることが理想です。
とはいえ最初から聞き漏れなく、深掘りを行うのはとても難しいので慣れないうちはヒアリングシートを埋めることを意識しましょう。
また、私個人が最低限聞き取るべき事項の中で重要なのは下記の4つです。
・時期
・エリア
・家賃
・理由
この4つが聞き取れていればそこからさらに深堀することができ物件提案もできます。
▼聞き上手になる
不動産の営業マンは話したがりの方も多いです。
自分の話や物件の話をするよりもお客様に話してもらうことを意識しましょう。
話してもらうといってもあまり話してもらえない場合もあります。
例えば次の二つのような理由が考えられます。
・お客様自身が希望の条件のイメージを掴めていない
・初対面の人に自分の環境を一から十まで話したくない
では話してもらうにはどうするかですが
「なぜ?」
を意識することです。
お客様に興味を持ち、尋問的な質問ではなく深堀していきましょう。
お客様の何となくイメージする物件、背景を想像しながら深堀していくことでお客様自身が気がついていないニーズを把握することができます。

このように常に「なぜ」を意識しましょう。